スターレス
「スターレス」 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
キング・クリムゾンの楽曲 | ||||||||
収録アルバム | 『レッド』 | |||||||
英語名 | Starless | |||||||
リリース | 1974年10月6日 (1974-10-06) | |||||||
録音 | 1974年8月 (1974-08) | |||||||
ジャンル |
| |||||||
プロデュース | キング・クリムゾン | |||||||
『レッド』収録順 | ||||||||
| ||||||||
|
「スターレス」(英: Starless)は、キング・クリムゾンの7枚目のスタジオ・アルバム『レッド』(1974年)の最後に収録されている曲。
概要
1969年に『クリムゾン・キングの宮殿』でデビューして以来、メンバーチェンジを繰り返しながら常に新たなサウンドを探求してきた1970年代のキング・クリムゾンの最後を締めくくるにふさわしい壮大な楽曲である。1972年にイエスが発表した『危機』、1973年にピンク・フロイドが発表した『狂気』など、すでに1970年代前半にはプログレッシブ・ロックは最高潮に達していた。しかし、1970年代半ばからパンク・ロックが台頭すると、プログレッシブ・ロックは人気、音楽性ともに衰退の一途をたどる。そのような潮流が始まる前の1974年に発表された「スターレス」は、プログレッシブ・ロックの鎮魂歌ともとれる重要な作品である。
2014年に始動したトリプルドラム期にも再びレパートリーとなり、アンコールのラストで披露されることが多くなった。ただしクリムゾンのセットリストは日替わりであり、必ず演奏された訳ではない。「最後の世界ツアー」とアナウンスされた2021年の「MUSIC IS OUR FRIEND」ツアーでもたびたび披露され、世界最終公演となった同年12月8日の日本公演(渋谷オーチャードホール)でもアンコールのラストに演奏された。これにより、キング・クリムゾンが最後に演奏した楽曲として、バンドそのものを締めくくる作品となった。
アメリカの音楽誌ピッチフォークは、本作について「キング・クリムゾンが録音した曲の中で最も素晴らしいもの」と絶賛している[4]。また、イギリスの音楽誌ラウダー・サウンドは、史上最高のプログレッシブ・ロックソング100曲の中から、本作を第9位に選出した[2]。
制作
本作のオリジナルコードとメロディーは、「Starless And Bible Black」と題しジョン・ウェットンによって作られ、ウェットンはこの曲を前アルバム『暗黒の世界』のタイトルトラックにしようとしていた。ロバート・フリップとビル・ブルーフォードは当初この曲を嫌い、録音することを拒否した[5]。代わりに「Starless And Bible Black」は、即興のインストゥルメンタルとなった。しかし、元の曲は後に復活、歌詞が変更され、ブルーフォードの発案でベースリフに基づく長い即興パートが追加されて、1974年3月から6月にかけライブ演奏された。アルバム『レッド』のレコーディングでは、リチャード・パーマー・ジェイムスによって歌詞が再び変更され、デヴィッド・クロスがヴァイオリンで演奏していた冒頭のメロディーは、フリップのギターに変更された。「Starless And Bible Black」が曲名としてすでに使用されていたため、本作のタイトルは「Starless」に短縮された[6]。
構成
「スターレス」の長さは12分18秒で、アルバム『レッド』の中で最長である。前半はメロトロンとギターの主題で始まり、サックスを絡めた抒情的なボーカル曲である。中間部は、4分の13拍子で構築される。ジョン・ウェットンのベースから始まり、ロバート・フリップが2本の弦で単音のフレーズを反復させ、ビル・ブルーフォードの不規則なパーカッションが加わって徐々に緊張を高めていく。後半は、再びサックスが加わってスピード感のあるジャジーなサウンドに一変し、激しいギター、ベース、緻密なドラミングは、8分の13拍子までテンポを上げる。最後は、前半のメロディーをリプライズし、メロトロンとサックスの主題で幕を閉じる[7]。
カバー
「スターレス」は、ニール・モーズ、マイク・ポートノイなどによってカバーされている。作曲家クレイグ・アームストロングのアルバム『As If to Nothing』(2002年)では、「Starless II」として収録されている。Crimson Jazz Trioのアルバム『King Crimson Songbook Volume One』(2005年)には、ジャズのアレンジが収録されている。
ライブ演奏では、ジョン・ウェットンが創設メンバーだったスーパーグループのエイジアや、ウェットンがゲストボーカルを務めたハンガリーのシンフォニック・ロックバンドであるアフター・クライングによってカバーされている[8]。また、トリビュートバンドの21stセンチュリー・スキッツォイド・バンドのライブでもカバーされた。
日本では、俳優の髙嶋政宏が、ソロシングル「こわれるくらい抱きしめたい」のB面で、ANTHEMの柴田直人が1999年にリリースしたカヴァーアルバム『STAND PROUD! II』で本作をカバーしている。また、モルゴーア・クァルテットが弦楽四重奏に編曲してカバーしている[9]。
備考
- 日本発売当時の邦題は「暗黒」である。
- 2018年に公開されたニコラス・ケイジ主演の映画『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』のオープニングで、冒頭部分が使用されている[10]。
パーソネル
- ジョン・ウェットン - ボーカル、ベース
- ロバート・フリップ - ギター、メロトロン
- ビル・ブルーフォード - ドラムス、パーカッション
- ゲスト
脚注
- ^ “The Road to Red”. rollingstone.com (2014年1月3日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ a b “The 100 Greatest Prog Songs Of All Time”. loudersound.com (2018年3月26日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ “King Crimson talks ever-changing band,music”. Foster's Daily Democrat (2017年11月9日). 2022年5月10日閲覧。
- ^ “Red King Crimson”. pitchfork.com (2017年9月10日). 2022年4月22日閲覧。
- ^ Bill Bruford (2009). The Autobiography: Yes, King Crimson, Earthworks, and More. Jawbone Press. ISBN 978-1-90-600223-7. https://books.google.co.jp/books?id=z_7VsmxN0sYC&redir_esc=y
- ^ “John Wetton (King Crimson, U.K., Asia): The Complete Boffomundo Interview” (2016年9月15日). 2022年4月22日閲覧。
- ^ “King Crimson Red”. sputnikmusic.com (2010年5月17日). 2022年4月22日閲覧。
- ^ “STRUGGLE FOR LIFE”. PROG ARCHIVES (2005年7月4日). 2022年4月22日閲覧。
- ^ “結成20周年を迎える、モルゴーア・クァルテット~『21世紀の精神正常者たち』”. TOWER RECORDS (2012年5月21日). 2022年12月20日閲覧。
- ^ “Nicolas Cage's Slasher Freakout 'Mandy' Makes Prog Rock Kick Ass”. vice.com (2018年10月11日). 2022年5月7日閲覧。